片葉の葦(かたはのあし)~塩原七不思議のひとつ~
ある川のほとりで、お坊さんが修行をしていたとき、そのお坊さんに思いを寄せた村の娘が毎夜葦笛を吹いた。しかし毎晩聞こえるその笛の音にも、お坊さんの心は乱れることなく修行を続けた。
夏の半ばを過ぎたある夜、少女は葦の葉かげに姿を現し、一筋の涙を流した。
それから少女の姿を見かけることはなかったが、少女の片思いの気持ちは葦の葉に現れ、
この地に生える葦の葉は、初めは両葉でも8月に入る頃から、全て片葉になってしまうという。
旧塩原町名誉町民で詩人でもある泉漾太郎氏も片葉の葦にまつわる詩を残している
月に宿かす片葉の芦の 葉にも涙の露が浮く
芦の葉繁るこのあたりで里人と思われし少女が、日夜阿弥陀の尊像を刻む修行僧に恋心を抱きつつも片思いに終わり、芦の葉の夜露を涙の露と呼んだ 悲愛なる詩
辻寛歩の句碑~塩原温泉文学散歩~
伝え古る源三窟の紅葉かな
長谷川伸一門で筆輪如流の誉れ高い寛歩は一方で国政にも参与し自民党の重鎮でもあった辻寛一である
源三位頼政の嫡孫、源有綱の旧跡に落人の運命を偲ばせる名句。
ここに杖を曳く客の旅情に有為転変の人生感を抱かせる。